西牧徹 「夜に沈む果実の影」 

黒戯画を発表する氏の艶画部門を展示いたします。夜のギャラリーにふさわしいフェティッシュな世界を堪能いただけることと思います。
西牧徹氏について
●ルストブ・J・オクスフルール (ポルトガル人小説家)より寄稿
はじめての印象の半ば嫉妬にも近い羨望は、私をしばし呆然とさせた。西牧徹の鉛筆画を見たのはそう、今から9年も前か。彼の描き出すユニセックス・ファンタズムのその頽廃的エロティカを羨み、私は一目で虜となった。なまめかしくも過激なブーツは音をたてるほどに革のソファーを踏みつけ、弄ばれ散らばるケーキや玩具を笑う。そのユートピアに生きる男の子のビキニを強く押し上げるペニスに憧れのまなざしを向ける少女は一様に驚くほど短いスカートを貼りつかせ、時にブーツを、膝上まである肌に貼りつくようなストッキングを挑発的に引っ張り上げる姿態に私は心を奪われたものだ。この度の展示は北海道の札幌。訪れることのできる日本の人々に対しての羨望もまた嫉妬にも近いか、とわたしは笑った。
              幻想エロス長編『寄生するヴィーナス』『海辺』は2020年、日本からも刊行予定                 
● 西牧 徹
1964年東京都生まれ。
少女をモチーフにペン・色鉛筆画を経て、現在の鉛筆画に定着。
80年~90年にかけ、自分が構築した世界を生かした挿し絵入り
散文詩画集を3冊、私家版として制作。
2001年1月、初の個展を開催した。
緻密で迫力ある濃淡に彩られた独特の情感を描き続ける西牧氏。
その作風は林良文のような存在感とベルメールのような
官能的な有機フォルムに満ちている。

●<本人コメント>
私が描く子供の世界では男女の性差は殆ど無く、性器以外は同一の存在です。
そのような子供たちがいる、未踏の森の中のホテルまたは特別な施設などを
設定背景とし、至福を追及した世界を創りだしています。
そして、奇異なものと、現実のものを同居させることによって、私たちの住む世界
と似て非なる世界を可能な限りリアルな描写で表現することを目指しています。
技法的に到達したい画家として、アーリング・ヴァルティルソン、
エリック・デマジエール、尾崎眞吾といった方々がいます。

●<黒戯画(Blacken Caricature)とは>
2003年に自らの作品を「黒戯画」と名づける。
この「黒戯画」は、性幻想に基づく“艶画”と、
空想動物の日常と冒険を描く“福画”に大別される。
これらはユートピア絵画という点で同一線上の世界にある。